2017年6月21日水曜日

2016年度国外研究報告〜長谷川倫子さん


2016年度国外研究報告

20164月から20173月まで、サバティカル(研究休暇)で英国のロンドンに暮らす機会に恵まれました。研究テーマが「若者文化とメディア」でもあり、1960年代における若者文化発信地の一つでもあったロンドンを研究拠点の第一候補にしました。しかしながら、先輩や海外の友人からの事前のアドバイスで繰り返し聞かされたのは、英国ならではの入国ビザ申請手続きの煩雑さに加えて、受け入れ研究機関と住宅探しの大変さでした。

確かにビザの手続きは想定通りでしたが、偶然の出会いに幸運が重なり、ロンドンのほぼ中心に位置するブルームズベリー地区にある、いわゆるSOAS(ソアス)という略称で知られているロンドン大学東洋アフリカ研究学院の日本研究所が受け入れてくださることになり、フラット探しも何とかクリアで、1年間の研究活動を終えて無事に帰国することができました。

トケコミブログ・デビューにあたり、簡単ではございますが、研究活動のベースキャンプとしてお世話になりましたSOASを、筆者なりの目線からご紹介させていただきたいと思います。

まず、所属機関の第一志望としてSOASを希望したのは、ここが英国における公立の教育機関による日本語教育のパイオニアであることを知っていたからでした。

ちなみに、筆者が滞在した2016年に、SOASは創立100周年を迎えました。西暦43年にやってきたローマ人によってつくられたシティを中心に発展し、壮大な歴史を物語る建造物や文化遺産が随所にあふれるロンドンの基準からは、「たかだかこの100年を語り伝えるもの」に過ぎないのかもしれません。それでも、貴重な共有財産を次世代やそのもっと後の人たちに残すためにはどんな努力をも惜しまない英国人の精神こそ、暮らしてみて初めて知り得たことでした。

その開学以来、日本語のクラスが開講されていた英国唯一の教育機関であったSOASでしたが、大きな転換点となったのは第二次世界大戦(19391945)でした。とりわけ19422月のシンガポール陥落をきっかけに、当時不利とされていた連合国の前に、大英帝国がその威信をかけて闘わなければならない国として日本が急浮上しました。通信の傍受、押収した書類の翻訳、捕虜の訊問など、前線で日本語を使える人材の不足は致命的で、その育成は待ったなし。いわば、日本語に精通したエキスパートの養成は国家的な急務となり、英国政府から委託されたSOASがこの役割を担うことになりました。

19425月、急遽(きゅうきょ)開設された特別日本語コースに集められた、グラマースクールのシックス・フォーマーたち(17歳。日本の高校3年生に相当)は、そのキャンパスの地名にちなみ「ダリッジ・ボーイズ」(Dulwitch Boys)と呼ばれました。日本語の特訓期間は15か月か18か月間。彼らはコース・ワークを修了すると、程なく前線に送られ重要な役割を担います。

今日のように優れた教材があるわけでもなく、すべてが試行錯誤の船出でしたが、新規採用の教員たちも、この日本語教育に国家の将来が託されていることは熟知していました。そんな中に、両国の狭間にありながら、日本人としての誇りを失うことなく英国の若者たちに日本語を教えた女性がいました。日本で出会った英国人の夫であるフランク・ダニエルズ先生と一緒に教壇に立つことになったおとめ・ダニエルズ先生でした。敵国の言語を叩き込まれた学生たちでしたが、最後には日本文化と日本人をレスペクトするまでになったと記録されていますが、熱意あふれた講師陣のなかでも、この「おとめ先生」の貢献は、はかり知れないものがあります。

戦争という英日関係史の負の部分がもたらしたSOASの日本語教育でしたが、その真価は戦後に証明されました。1942年(昭和17年)から1947年(昭和22年)までにここで学び、終戦で兵役から解放された648名のダリッジ・ボーイズは、外交、ビジネス、教育など、それぞれがその置かれた場所で日本語を活用し、戦後は両国の懸け橋となってくれたのです。

2016年の2月に、SOASでは日本語教育開始100周年を祝うシンポジウムが開催されました。SOASで日本と出会い、今は各界で活躍する各世代のOBやOGが一同に会した中でも、参加者たちを最も喜ばせてくれたのは、檀上のパネリストに加わった日本でも著名な社会学者ロナルド・ドアー先生でした。この日はまた、ダリッジ・ボーイズのお一人でもあったドアー先生の91歳のお誕生日でもあり、「女性の先生が本当に素敵だった!」と、一期生として日本語の手ほどきを受けた青春時代を回想されていました。

嬉しいことに、今日においても、SOASにはあの「おとめ先生」の精神が脈々と受け継がれています。東京で出会ったご主人とともに英国に渡り、その生涯のほとんどをSOASの日本語教育に捧げていらっしゃるある日本人の先生に食事会でお会いしました。偶然ですが、大学の先輩だったこともあり、SOAS恒例の日本語のスピーチ・コンテストでは、縁の下の力持ちとして東奔西走している先生を拝見し、また、折につけ、SOASで日本語を学ぶ学生さんたちのエピソードをお聞きできたのは何よりでした。このような方たちの日々の積み重ねがあったからこそ、100年にもわたり日本語教育の最高峰であり続けることが出来たのだと納得しながら、伝統の重みを感じずにはいられませんでした。

今この時間にも、日本が世界の人びとを魅了する磁場であり続けるよう、たくさんの「おとめ先生」が世界のどこかで活躍し、日本ファンが育ってくれていることでしょう。今は国分寺の教壇にもどった筆者ですが、SOASでの1年間を振り返りながら、トケコミの学生さんたちに少しでも海外に関心を持っていただけるよう、サバティカル前以上に研鑽を重ねようと心に誓う毎日です。

<参考文献>
大庭定男『戦中ロンドン日本語学校』(中央公論社、1988年)
Oba, Sadao translated by Anne Kaneko, The ‘Japanese’ War: London University’s WWII secret teaching programme and experts sent to help beat Japan (Routledge, 2015)

ブロガーの自己紹介:
コミュニケーション学部 長谷川倫(とも)子   
専門はメディア史ですが、トケコミでの担当は「マス・コミュニケーション論」です。帰国子女でもないし英語圏のDNAもおそらくゼロパーセント(0%)ですが、海外への憧れから続けてきた英語学習と雑学が役に立ちました。研究テーマは「若者文化とメディア」、「戦時期のプロパガンダ映画」等です。

 
     
SOASの正面玄関にて:通りからみると古めかしい外観でも、一歩足を踏み入れると、その奥にはおしゃれなインテリアに最新のネット環境も整えられている空間が迎えてくれるというのはロンドンの定番です。ここSOASでも、クラシックな建物が教育・研究活動の拠点として十二分に活用されていました。

      
SOAS創立100周年記念のバナー:夜遅くまでキャンパスは活気にあふれています。

2017年6月11日日曜日

新任教員紹介 VOL.2 新井一央さん


 私が「私になる」ために…
みなさん、こんにちは。 
新任教員としての自己紹介は、とても気恥ずかしい新井です。なぜなら、すでに8年ほど前から学習センターの委託講師として「TKUベーシック力」をはじめ各種講座を、また4年前からは現代法学部の非常勤講師としてプレゼンテーション技法基礎やコミュニケーション学部のキャリア系のワークショップを担当。「新任」とはあまりに厚かましくありませんか。とはいえ、みなさんに改まってお話しできるチャンス。よろしくお願いいたします。

 さて私の業務の中心は、2017年度より新設された「キャリアデザインプログラム」の学生へのキャリア支援です。ワークショップや面談を重ねながらの支援です。このプログラムは入学時に学部選択に迷っている、社会科学系の基礎科目を広く学びたい、自分の可能性をじっくりと見極めて進路選択をしたい、4年間継続してキャリア関連科目を受講したい、というみなさんに最高のプログラムを提供します。少人数のワークショップを通じて、仲間や私たち教員と一緒にキャリア形成の足掛かりをつくりましょう。

 ところで話は飛びますが、先日、妻に誘われて三菱一号館美術館で開催されていた「オルセーのナビ派展」に足を運び、ひと時を楽しみました。

今年3月まで芸術学部で教壇に立っていた私。でも絵画への造詣は微塵もありません。音声ガイドを頼りの初心者。そんな私が「キャリアの節目でさまよう学生の姿」とイメージが重なりふと足を止め、吸い込まれた一枚の絵画をご紹介します。

 
 (ガイドとチケットです)

1865年生まれのスイス人画家フェリックス・ヴァロットンFélix Edouard Vallotton)の「ボール」Le Ballon 1899年)という作品です。 この絵に魅せられた私は、見学コースを歩き終えたあと、ポストガードとそれを飾るためのミニチュア・イーゼルを購入。迷える学生の象徴として研究室に飾り、自分への戒めとしています。


それは白い服の少女が、無心に赤いボールを追っている絵です。少女は木々に覆われた影の切れ目にいます。ぽっかりと光がまぶしく感じられる場所。少女の後ろに広がる影。その実態である森を私たちは見ることができません。少女にもそんな森の実態も影の存在も目に入っていないはずです。目には前方に転がっていく赤いボールだけ。この絵に無邪気な可愛らしさと、危うさや迫る影を感じました。
  (購入したポストカード)

社会は若い人たちが夢(ボール)を追うことを「よし」とします。自分の「やりたいこと」(ボール)探しを勧めます。見つからないときは「自己分析」。でも夢が持てない、やりたいことが見つからない人に「自己分析」は有効でしょうか。赤いボール(夢ややりたいこと)を見つけるために森をさまようのは危険です。かりにボールを発見できても周囲への観察を怠ると、天候の急変や深く迷い込み抜け出せなくなる危険も。

 社会の変化が激しく、先の見通しが困難な現代。大切なことは、ボール探し以上に「時代を認識する目」を養い、時代のなかで私を確認することです。無心にボールだけを追いかけられるのは、誰かに見守られている幼子の特権。この絵の奥には大人二人の存在が確認できます。でも決して少女を見守っていません。社会や他者との関係から切り離され、自分の居場所に無頓着でボールを一目散に追いかける少女に、自分を見失い進路に迷う若者の姿が重なります。

 大学は学びや出会い、体験の積み重ねを通じて「時代を認識する目」を養う貴重な場所です。内なるボール探しの前に外なる社会に目を向けましょう。外との関係のなかでこそ、きっと新しい私(ボール)を発見することになります。


 

ちなみに上のバラは美術館の中庭に咲いていたバラです。社会心理学者のエーリッヒ・フロムは『よりよく生きるということ』のなかで「バラの木の目的は、バラの木のなかに潜在的可能性として備わっているすべてになるということ」と言っています。
私たちが生きる時代を捉え、みなさんのなかにある潜在的可能性として備わっているものすべてになるために、ともに学びましょう。

2017年5月29日月曜日

新任の先生方はどんな人? 「トケコミトーク・デビュー編」のご案内

コミュニケーション学部長の柴内です。5月も終わりかけていますが、新入生の皆さんは、大学生活にもなじんでいるでしょうか。さまざまな講義や、学生生活で目も回るような忙しさかもしれませんが、1期(前期)も折り返し地点です。夏休みまで、一踏ん張りしてください(最後には、定期試験がありますけれど…)。2年生以上の皆さんは、GW以降の学生生活、よく慣れているところかもしれませんが、惰性で過ごさないようにお気をつけを。4年生は、就職活動のことで頭がいっぱいかもしれません。必修の卒業制作・卒業論文も忘れないでください。

さて、コミュニケーション学部では今週(5/31・水)から、お昼休みの企画が行われます。新しく着任した3名の先生から、ご自身のこれまでのお仕事や、これから取り組みたいことなどざっくばらんにお話しいただく、「トケコミトーク・デビュー編」です。それぞれユニークな先生方、面白いトークになると思います。

以下のスケジュールで行われます。場所は6号館2階、学習センターの講座スペースです。

第1回 5月31日(水) 12:15~12:40 大岩 直人 先生(教授・広告論)
第2回 6月 7日(水) 12:15~12:40 小林 誠 先生(専任講師・文化人類学)
第3回 6月28日(水) 12:15~12:40 新井 一央 先生(特命講師・キャリアデザイン)

お昼休みの時間ですが、ご飯を食べながらの参加で構いません。授業やゼミ選択の参考にもなることと思います。ぜひ、足を運んでください。そうそう、全学部対象のイベントです。

詳細は、以下のリンク(学習センター)で確認してください。
http://www.tku.ac.jp/student_support/gakushu/news/019311.html

お待ちしています。

【身体表現/メディア制作】これまで、そしてこれから 2017





説明を追加
【ワークショップ中村座】では、毎回、大学内外、国内外から多才なゲスト講師のみなさんをお招きして、わたし、そして履修するメンバーとの貴重な出会いとコラボレーションの機会をいただいてます。
前期講義も中ほどを過ぎました。
現在進行中のワークショップや、今後のゲスト講師のみなさんについて、ページを更新しました。

http://rieko.jp/lab/?page_id=4763


ゲスト講師のお顔画像から、それぞれ詳細情報ページへリンクします。




今年も、日日アート、新たなアートの萌芽が今、ここ、東経大のスタジオから始まっています!

どうぞ今後にもご期待ください!





2017年5月14日日曜日

学問のミカタ:スポーツを通して自分を知る





 コミュニケーション学部で演習と身体表現ワークショップ「コーチング」を担当している遠藤愛です.今回の「学問のミカタ」は,“スポーツを通した学び”がテーマです.



 私たちは,小学校から既に明らかにされている正解の数を競う場面が多々ありますが,スポーツでは個々の選手によって身につけるべき動きや技術が異なります.競技者としてスポーツに打ち込む面白さの一つは,自分独自のわざを探究し,創り上げていくことです.アスリートは,毎日,毎日,トレーニングをしながら自分独自の正解を探し,それを習得した者が勝ち残っていける世界に生きています.その世界で指導者の役割は,選手が自分の体格,性格,持っている能力を最大限に生かした独自の技術を築く過程において,客観的に評価し,ヒントを与えて導いていくことです.そのために,指導者は選手の特徴を理解した上で目指すべき方向性を示し,目標を達成するための具体的な手段を示して実行させなくてはなりません.私もかつて指導者とともに“自分の知らない自分”との出会いを通して自分の持つ可能性に気づき,勝負の世界に挑戦し続けていました.スポーツを通して協調性や自己を律することを学ぶのと同時に,自分と向き合い,自己に対する理解を深めることも大切な学びの一つといえるでしょう.


1989年高3夏のインターハイ決勝,相手は伊達公子さんでした.撮影:真野博正氏

 これまで私のゼミでは,伝えること,自分を表現することなどをテーマとしてきましたが,今年度は「己を知ること」を選びました.学生には,幼児期からの運動経験を整理し,運動を通して何を学んだのか,運動経験が今日の自分にどのような影響を及ぼしているのか,さらに今後は,現代社会の中で自分の身体とどのように付き合っていくのかなどについて考えてみようと提案しました.私は,世界レベルで活躍したテニス選手達は,どのような運動遊びの経験があるのか,それがプレーにどのような影響を及ぼしているのかについて研究しています.調査した結果,トッププレーヤーは幼児期から様々な運動を経験し,運動を通して実によく自分のことを理解しています.走る,跳ぶ,投げる,登る,漕ぐなどの様々な基礎的な運動において,自分は何が強くて何が弱いのか,フィジカルとメンタルおける自分の長所・短所をよく理解し,長所を生かして短所を補ったプレースタイルを習得しています.
 
 今,日本では2020東京オリンピックに向けてスポーツ庁も設置され,スポーツエリートに対する関心は高くなっています.ネットなどを通してサッカー,バスケットボール,テニス,野球,スケートなど世界トップレベルのスポーツを見て,ワクワクするようなスーパープレーを目にする機会も格段に増えました.ただ,私はやっぱりスポーツはヒトの運動から発生し,“普通の人々”の生活の中に根ざしていくものだと思います.私たちが日頃行っている何気ない動きの原点を見つめ,スポーツをより身近に感じて欲しい,スポーツを通して自分の内面と向き合い,自分自身についてさらに理解を深めて欲しいと考えています.










 (1996年,神尾米選手と) 


身体表現ワークショップではプロスポーツカメラマンの真野博正氏に”写真で表現すること”について講義していただきました.写真は全て真野氏の作品です.



2017年5月1日月曜日

新任教員紹介 vol.1 大岩直人さん

春は残酷な季節??



新任の大岩です。広告論、コミュニケーション戦略論、コンセプトと表現、メディアクリエイティブ ワークショップ等を担当します。前職は電通という広告会社でクリエイティブ・ディレクターをしていました。今までの経験を生かしてクリエイティブな発想法を授業に取り入れていきたいと思っています。担当するゼミのタイトルを「ひとと違うことを考えられるようになる、ためのゼミ」「ひとと違う考えをカタチにできるようになる、ためのゼミ」としました。ちょいと気の利いた風のことを言ってみたくなるのは、よくも悪くも広告業界育ちのクセみたいなものです。別名「あまのじゃく」推奨ゼミとでも覚えておいてください。

さて。ひとと違った意外性のある文脈を考え出すためにはいくつかのテクニックやスキルが必要になってきます。それを訓練すれば誰でもアイデアを捻り出せるようになれます。と言いながら、今までの人生で何度私は眠れぬ夜を過ごしてきたことか。翌日の締め切りまでに自分が納得できるアイデアにたどり着けず、何度自分の才能の無さを嘆いてきたことか。アイデアを考えるということ、そしてそれを表現するということはとても孤独な作業です。でも、やっぱり、その孤独を補って余りあるココロトキメク時間です。その魅力を若いみなさんに伝えていければと思っています。

さて、話は変わりますが(こういう唐突な話題転換はリポートの書き方としては正しくないのかもしれませんね。でもまあ、これはブログですから)、東京経済大学のキャンパスはとても素敵な場所にあります。緑豊かでこんこんと清水が湧いています。桜の季節、野川沿いの風景は情趣溢れておりました。目黒川沿いよりも神田川沿いよりも断然好みです。昔々、私がみなさんと同じ大学生だった頃にやはり国分寺にキャンパスのある大学に通っていたこともあって、このあたりの風景に対してちょいと贔屓目になっているだけなのかもしれませんけれど。でも、この季節、私たちが住んでいる世界の情景は掛け値なく美しい。春は何かを始めるのにはやはり最高のタイミングなのだと思います。その分、春は残酷な季節でもあるのですが(これはTS・エリオットの受け売りです)、若いみなさんはまだまだそんなことまで考える必要はありません。
 




大学生のみなさん、そしてこれから大学を目指すみなさんには、さまざまなリベラルアーツに首を突っ込んでもらいたいと思っています。リベラルアーツって日本語に訳すとただ単に一般教養となってしまいますが、本来は自己を解放する(リベラルにする)アーツ(技術)という意味だそうです。自己を解放しつつ学び方を学んで(learn how to learn)、そして時には今までの知識を敢えて忘れて(unlearn)、この世界のさまざまなモノ・コトを自分なりの知恵と美意識で再構成・再定義できるひとになってください。これは自戒も込めて言っています。

そんなことをテーマにして書いた本(というか講義ノオトみたいなものです)を3月に出しました。タイトルを「スーパードットなひとになる。〜コミュニケーションとテクノロジーの“今”」としました。これからの時代を担うみなさんはどんなことに対しても好奇心旺盛なマルチプレーヤーであってほしいと思って書きました。世界中どこに行っても異文化なひとたちに対して臆せず自己表現ができて、周りの共感を創り出せるひとになってほしいと思って書きました。すぐに読めます。中身はそれなりに濃い目に書いたつもりですが、ページ数は30ページ程度とかなり薄っぺらいのでw Kindle版とPOD(プリントオンデマンド)版があります。よろしかったらどうぞ。


   


人間ってなんでしょう?この不完全で曖昧で、だからこそ素敵な存在。その互いの関係性のメカニズムをさまざまな視座から探求していくことがコミュニケーション学だと私は考えますが、みなさんはどう思われますか?

2017年4月28日金曜日

講演会のお知らせ


       フィリピンの漫画を知っていますか?
      
Ace Vitangcol & Roy D. Vitangcol氏 特別 講演会


The "Studio Studio" Story: Making Manga in the Philippines

フィリピンで今人気のマンガLove in the BagAngel Crushの作者と編集者を迎え、フィリピンのマンガ事情、日本のマンガの影響などについてお話をしていただきます。アメリカン・コミックスの制作では歴史の長いフィリピンで日本マンガが流行しているのはなぜでしょう?どんなマンガが人気なのでしょう?グローバル化するマンガについて、フィリピンの視点から考えます。 
(使用言語:英語)


日時:2017519日(金)  13001500  
(講演は1時間半程度を予定)

会場:東京経済大学 6号館 7F 中会議室1
主催:国際交流員会
・参加自由
・参加費無料


 エース・ヴィタンコル氏(Ace D. Vitangcol
 マンガの出版社Altrial Hill PublishingCreative Directorでマンガの作者。代表的な作品には、Love Is in the Bag(2011-2014)Angel Crush(2011-)がある。アテネオ・デ・マニラ大学で非常勤講師として、visual communicationとコミックス創作の授業を担当。



  
ロイ・ヴィタンコル氏(Roy D. Vitangcol

Altrial Hill Publishingのマンガおよびライトノベル編集・校正者。マンガMy Celestial Family (2016-)の編集と共作、ライトノベル The Lorelei Wang Case Files (2013-)の編集などを担当。


                             
国分寺駅からの道順は大学ホームページをご覧ください(http://www.tku.ac.jp/access/kokubunji/)
 


2017年4月24日月曜日

北村先生と佐々木先生がテレコム社会科学賞を受賞


コミュニケーション学部の北村智准教授と佐々木裕一教授が、その著書『ツイッターの心理学 情報環境と利用者行動』で電気通信普及財団の第32回テレコム社会科学賞 奨励賞を受賞しました。

表彰される北村先生(帝国ホテルにて)

『ツイッターの心理学』は2016年7月に出版された学術書で、ツイッター利用者へのアンケート調査とツイッター社のデータベースから取得した客観データ(利用者のフォロー数や発言数など)を組み合わせて分析した点に特徴があります。


まずは北村先生から受賞のことばです。
受賞の対象となった『ツイッターの心理学 情報環境と利用者行動』は、2013年から開始した共同研究の成果をまとめた書籍です。研究助成を獲得できたタイミングで佐々木裕一さんがサバティカル先の米国から帰国されたので、研究室のドアを叩いて挨拶もそこそこに共同研究に誘ったように記憶しています。同僚とのコミュニケーションによって出来上がった書籍で学術賞を受けられたことを大変うれしく思っています。

これを引き継いで、佐々木先生は次のとおりコメントしました。
私も同僚との共著での受賞を大変喜んでいます。共同研究に誘われたのは、米国滞在時に私がしばしばブログでツイッターのことを書いていたのを北村智さんが読んでいたからでした。北村さんは利用者行動、私はマーケティングの観点から主にソーシャルメディアを研究していますが、終章の「ソーシャルメディア時代のオンライン世界の今後」はそんな二人の合作感が出ています。ウェブの今後にまつわる大事な問題を論じているので、この章だけでも図書館でぱらぱらとめくってもらえると、さらに嬉しいです。
2人で記念撮影(トケコミブログ編集長撮影)


北村先生と佐々木先生、おめでとうございました!

2017年4月13日木曜日

「盛りだくさんのマレーシア研修、どうだった?」(後編)


(トケコミ4ゼミ合同海外研修報告その3

「感受性豊かな時期に海外へ!」をかけ声に、2月末に、
松永/中村/光岡/佐々木の4ゼミが合同でマレーシアとシンガポールへ研修に行ってきました(8日間)。


前半は、クアラルンプールにある Asia Pacific University of Technology and Innovationで午前に英語研修を受け、午後は研究テーマにしたがって街中を視察。5日目は、トケコミへのマレーシアからの留学生実家がある同国南端のジョホールバルへ移動し、ご両親からの大歓待を中華料理店で受けました。その後、陸路でシンガポールに入り、半日だけ観光をして帰国という濃密なプログラム。前回に続き、日本で留守番をしていた教員・松永が、参加学生らの生々しい声をもとにレポートします。
 
 ※(前編)はこちら


◆ことばをめぐって
 本研修の目的の一つは、マレーシアという多言語社会における「英語」、つまり母語ではなく共通語としての英語を学ぶことにありました。キャンパスでの生活や街でのフィールドワークを通して、「ことば」について考えさせられたというレポートを紹介します。


「英語」の多様性
 これまで自分たちが習ってきたのは、アメリカやイギリス、オーストラリアなど、英語を母語とする人々の話す言葉であった。しかし、世界には様々な「英語」がある!そう悟ったという報告が少なくありません。
 世界約110カ国から集まった学生の学ぶAPUのキャンパスで耳にしたのは、ナイジェリア人の英語、スペイン人の英語、ロシア人の英語、パキスタン人の英語など、非常にバリエーションに富んだ「英語」で、新鮮だったといいます。
 自由時間を使って、マレーシアで活躍する日本の芸人さんに会いに行ったY.Mさん(1年)は、「英語」でコメディアンショーを鑑賞したときの感想をこう綴っています。

マレーシアは色んな民族の人たちが集まっていて、一律に英語といっても、インド系、マレー系、中華系などエスニシティがちがうだけで全く別の言語のように感じた。

 世界の人とコミュニケーションをとるには、多様な英語を聞き分けることが必要だという気づきは、自分たちもまた、多少訛っていてもいい、何より英語を使うことが大事なのだという実感にもつながっていったようです。

 
【写真3 APUでの英語学習の様子:オランダ系、インド系、マレー系など先生も多様性に満ちていた


訛っても構わない。
伝えようとすること、それがイチバン大事
 speakingに重点をおいたAPUの授業で英語を使うことの楽しさを学んだ学生たちは、キャンパス外で、現地の人々に積極的に話しかけるよう努めたそうです。なかでも、タクシードライバーとの対話で自信をつけたという報告が複数寄せられました。
 タクシーを利用するたび、外国出身の移民ドライバーとの会話を楽しんだというW.Hさん(2年)は、「昼間は運転手、夜間は飛行機の整備士をしているという勤勉なおじさん」が、携帯のアプリを使って一生懸命日本語で話しかけてくれたことが忘れられないといいます。「日本人は優しく、まじめで尊敬している。お金もあるし、まじめなのに、英語を話せないのは不思議だ」という彼の言葉に納得しつつ、まずは相手に伝えたいという気持ちを出発点に言語を習得していこう、と決意しました。
 非言語コミュニケーションの大切さに気づいたのはM.F2年)さんです。

Thank you」は世界中どこでも通じる感謝のことばである。そのためわたしは、今回の研修でそのことばをいつどんなときでも使った。しかし、本当に心から感謝しているとき「Thank you」とただ伝えるだけではなにか物足りない感じがした。日本ではおじぎや手を合わせるなどのジェスチャーや、食事の際に使える「ありがとう」に代わる「いただきます」や「ごちそうさまでした」があるが、今回は感謝のきもちを「Thank you」のみでしか表現できなかった。
APUの授業では、「Memory」「Focus」「Gesture」この3つが英語を話すうえで重要だと学んだ。今回の貴重な経験を生かして、これから外国人とコミュニケーションをとる際には英語(ことば)以外でのコミュニケーション方法も試していきたいと感じた

「伝えたいことを伝えられない」という実体験は、今後の学習動機につながる貴重なものだと思います。「コミュニケーション」を学ぶ学生たちのこれからの飛躍が楽しみです。


◆留学生とともにアジアを歩く
 参加学生33名のうち3名は、中国、台湾、マレーシアからの留学生でした。彼らと一緒にマレーシアを歩くことで、旅は一層実りあるものになりました。

仲間を連れて母国へ
 マレーシア出身の学生(2J.Tさん)は、常にみんなの様子を気遣い、自由行動の指南役をつとめたり、家族との交流会をアレンジしてくれたりと大活躍の功労賞。そんな彼は、今回の旅を次のように振り返っています。

マレーシアから来日し、今年で四年目になった。これまで、マレーシアに帰国するときはいつも一人。日本に戻ってくるときも、もちろん一人だった。だから、東経大の友人と一緒にマレーシアに行き、また皆で日本に帰って来られた今回の旅行については「感謝」という言葉しか思いつかない。

 現地で我々トケコミ派遣団を大歓待してくださったJさんの家族、親族の皆さんは、彼が多くの友人に囲まれ、流暢な日本語で仲間を率いる姿に目を細められたそうです。その光景は、他の学生たちの心を打ち、異国・日本で暮らす留学生への尊敬と、彼らの存在がトケコミの国際色を豊かにしてくれることへの感謝の念を新たにする経験となりました。帰国後、多くの学生が「今度は私たちが、留学生に日本を案内したい!」と口にし、意気込んでいます。

  
 

 【写真4 ジョホールバルでの交流会:対岸のシンガポールを望みながら海鮮中心の中華料理を堪能!


中国語でつながる世界
 Jさんの家族をはじめ、中華系住民が人口の約24%を占めるマレーシアと、約74%のシンガポールで活躍したのは、中国(上海)、台湾出身の学生さんでした。現地の人に道を訊ねたり、Jさん一家との交流会で通訳を務めたりと、中国語を駆使して旅をサポートしてくれました。そのような貢献の仕方、能力発揮の可能性があるのだと初めて実感し、もっと海外を旅したいという意欲が湧いてきたY.Sさん(3年)は「知らない自分を発見した」といいます。
 「APUキャンパスでは英語、トケコミの日本人学生とは日本語、中華系の人々とは中国語で話す」トリリンガルな体験がとても面白かったと振り返るのはK.Cさん(3年)。その「強み」をもっと伸ばして、将来に活かしてほしいと祈っています。
 中華系の留学生が活躍した今回の研修で、学生たちは「英語だけが共通語ではない」こともまた学んだはずです。マレーシアは文化の多様性を知るうえで興味深い国であること、そして実際に研修の中身を作るのは参加学生一人一人であること。企画担当者としての深い学びでした。
 
 
【写真5 帰国直後の成田空港にて:フライト7時間遅れのアクシデントに関わらず、みんなこの笑顔!


◆さあ、新たな旅へ
 旅の終わりは、新たな日常の始まりでもあります。

今回の旅の多くの場面で、異文化を感じました。私たちの常識も彼らにとっては非常識。そんな風に考えられることは発想力も豊かになるような気がします。初めてのマレーシアでは、単語を合わせただけの私の拙い英語を真剣に聞いてくれる優しい人に出会ったり、夜景がきれいに見えるバーに行ったらバーデンダーに笑われたり、帰りの電車の時刻が表示されてなくて不安になったり、レストランの店員さんに鶴の折り方を教えることになったり、乗るはずの飛行機が大幅に遅れて空港で眠ったり、新しい体験がたくさんありました。この体験はこれからの私にきっと何かをもたらしてくれるのではないかと思います。今回、就職活動が始まる間近に海外に行くことに不安を覚えていましたが、行ってよかったと、本当に思っています。

そう、R.Sさん(3年)がまとめるように、自分の目で見たこと、肌で感じたことの先にある「何か」を掴みにいってほしい。さあ、新たな旅へ。そしてまた、トケコミ生の暮らす東京こそ世界有数の国際都市です。足元にひろがる異文化に満ちたフィールドで、本年度も学び多き日常を生きていきましょう。



※参加学生による報告会を、412日に開催しました。



 
 次回は18日の予定です。関心のある東経大生は是非会場へ!

 418日(火)E2015号館2階)12:2012:35