2016/10/24

ジョブシャドウイング ~働く志を学ぶ~

事後報告会後に、参加学生、NPO法人JUKEメンバーと

■ ジョブシャドウイング 実施概要


事前勉強会 2016820日(土)
訪問期間  2016822日(月)~826日(金)のいずれか1
事後報告会 2016827日(土)

【受入企業・団体(五十音順)】
一般財団法人労務行政研究所
外資系ベンチャー支援企業

参加学生数】 13名


コミュニケーション学部の小山健太です。

小山ゼミでは、2016年夏休みに「ジョブシャドウイング」を実施しました。

ジョブシャドウイングは、社会人の日常に1日付き添うことで、働くことの現実を理解する、キャリア教育の入門編です。米国では広く普及していますが、日本では各地で始まりつつあるという状況です。

ジョブシャドウイングは、一般的には、仕事内容の理解が目的とされます。しかし、今回の場合は、仕事内容そのものよりも、働く人の心理的側面(意欲、志、情熱など)を理解することに焦点をあてました。そうすることで、参加した学生が自分のキャリア開発に当事者意識を持つことを目指しました。

というのも、大学生の「仕事」や「働くこと」のイメージは、リアリティからかけ離れていて、とくに「つらい」「避けたい」というネガティブな印象を強く持っていることが多いです。

現在、多くの人は企業等の組織で働いており、自営業の方々はごく少数です。一昔前、自営業が多かった時代では仕事と生活が一体となっており、子どもは親の様子を見て、仕事の喜び、やりがい、そして苦労を、幼いころから肌で感じながら育つことができました。
しかし、現在では親が実際に働いている姿を見ないまま大学生になる人も多くいます。ですから、大学生がリアリティを知らないことは無理がないとも思います。

そこで、早い段階で、働くことのリアリティを理解することが大切になるのです(観察学習)。とくに、日本企業では、社員一人ひとりの仕事内容があらかじめ決まっていなくて、様々な仕事を経験しながら多様な能力を主体的に開発することが求められます。

したがって、今回のジョブシャドウイングでも、11つの仕事を理解することよりも、多様な仕事を経験しながら主体的にキャリアを開発していくための心理的側面(意欲、志、情熱など)を理解することを目的としたのです。

事前勉強会: 社会人パネルディスカッション
事前勉強会: 質問作成ワークショップ








事後報告会: 目標設定シート作成
事後報告会: 体験報告プレゼンテーション






実施に当たっては、ジョブシャドウイング・プログラムの運営で多くの大学や高校と連携実績のあるNPO法人JUKEの協力を得ました。

また、学生を受け入れてくださった企業・団体の皆様には、日常の仕事を見学させていただくという貴重な機会をいただくだけでなく、たくさんのメッセージを学生に伝えていただきましたこと、とても感謝しております。

学生のレポートからは、自分のキャリアについて強い関心を持てるようになったことが伝わってきます。少しご紹介します。
「今回のジョブシャドウイングを体験して、自分が知らないだけで探せば面白い仕事や興味深い仕事が多いということを感じさせられた。仕事に対する考えが変わる体験ばかりで自分の中のやる気に火がついた。」(3年生)
「まずは業界や職種についてもっと詳しく調べ、興味関心を広げていきたい。そして、それでも希望する業界、職種がなければ、会社で選ぶつもりだ。どこに配属されても、ここならずっとやっていける、と感じるような会社に勤めたい。」(3年生)
この経験を活かして、今後の大学生活の中で自分のやっていきたいことをもっと明確なものにし目標を立てながら努力していこうと思う。今回は1日だけ社会人に同行して観察するというものだったが、今後はインターンシップという活動もしてみたいなと感じた。」(2年生)
「ジョブシャドウイングを通して、今後の見通しが全く出来てない自分の甘さを学ぶことが出来ました。今までは将来はなんとなく就職をして生涯働こうとしか考えていなかったが、今後は将来を考えながら学校での授業やゼミ、サークルなどの活動やアルバイトをして将来役に立つスキルを身につけたり経験をするようにしようと学ぶことが出来ました。」(2年生)
「私はジョブシャドウイングで働くことを学ぶつもりでいましたが、それだけでなく生き方について学ぶことができました。この貴重な経験を、これからの一日一日に活かしていきたいです」(3年生)
参加した学生の皆さんは、今回の気づきを大切に、今後の大学での勉強や様々な活動に主体的に取り組んで知見を広めるとともに、インターンシップやOB/OG訪問などを通じて働くことの現実をより幅広くそして深く理解していってほしいと思います。

今回のジョブシャドウイングが、多くの皆様のご理解とご協力により実施できましたことを御礼申しげます。今後ともよろしくお願いします。

2016/10/17

2016年度ゼミ発表会のお知らせ

 コミュニケーション学部ゼミ発表会を開催します(参加自由)。

●2016年11月5日(土)15:00-17:05
●6号館3階 F307/F308

 ゼミの活動と成果をご紹介します。1年生にはゼミ選択の参考に、受験生や保護者のみなさんにはゼミのようすを知る機会にしていただければ幸いです。
 発表会終了後、懇親会を開催します。

F308(第1会場) F307(第2会場)
15:00-15:05  開会あいさつ   ←
15:10-15:25 【小山ゼミ】組織内コミュニケーションの研究−リアルから学ぶ 【阿部ゼミ】活動報告−数学とプログラミング
15:25-15:40 【駒橋ゼミ】経済ニュースと企業広報 【遠藤ゼミ】マナゼミってどんなことするの?
15:40-15:55 【北村ゼミ】ゼミの活動紹介と研究報告 【松永ゼミ】東京のなかの《故郷》
休憩(15分) 休憩(15分)
16:10-16:25 【北山ゼミ】やるときはやる!北山ゼミ 【光岡ゼミ】若者文化とファッション
16:25-16:40 【佐々木ゼミ】ゼミの紹介 【大榎ゼミ】表現研究
16:40-16:55 【柴内ゼミ】楽しく真剣に@柴内ゼミ  -
17:00-17:05  まとめ  ←


2016/10/10

【学問のミカタ】芸術の秋を楽しむ


コミュニケーション学部で「メディア文化論」を担当している光岡です。

 今月のテーマは「秋」です。皆さんにとって「秋」は何の季節ですか? 旬になる果物、野菜も多い「食欲の秋」ですか? それとも、体を動かすのに気持ちいい「スポーツの秋」でしょうか? 私の研究の一端ということもあり、今回はもう一つ、「芸術の秋」というテーマでお送りします。

 多くの方は「芸術」と言うと静かで気取った美術館の展示室を思い浮かべるのではと思いますが、20世紀末以降の芸術のトレンドはもっとカジュアルな体験を提供しています。特に東京では、美術館を離れたまちなかのアートスペースの数が大きく増加しており、日々の生活のなかでもまちなかで芸術作品と出くわすということも増えてきました。このような出会いのなかでも、代表的なものが国際芸術祭です。

 国際芸術祭とは、定期的に同時代を代表するアーティストを招いて開催されるイベントで、2年に1度のものをビエンナーレ3年に1度開催されるものをトリエンナーレと呼びます。より多くの方になじみ深いのはフジロックのような音楽フェスティバルだと思いますが、そのアート版とでも思って頂ければ良いのではないでしょうか。

 この秋も特色のある芸術祭が複数開催されており、10月に訪れることができる芸術祭をいくつかご紹介します。

第2回あいちトリエンナーレ会場間を
走るベロタクシーを利用する筆者(光岡)
あいちトリエンナーレ

現在開催中の第3回愛知トリエンナーレより
豊橋会場 久門剛史さんの作品
今回で3回目を迎えた芸術祭です。日本での国際芸術祭は2000年に入ると、地域型の代表である「越後妻有トリエンナーレ」、都市型の代表である「横浜トリエンナーレ」を皮切りに増加していくのですが、後発のトリエンナーレはそれぞれ既存の芸術祭とは差異化を図ります。
あいちトリエンナーレの特徴は、いわゆる絵画や彫刻のような芸術作品だけではなく、「パフォーミングアーツ」の公演を数多く取り入れている点です。今回も愛知県立芸術劇場を中心に、勅使河原三郎の作品など数多くの公演が予定されています。ですので、関心のある方は、パフォーマンスの日程を調べたうえで足を運ばれることをお勧めします。とりわけ10月は週末に数多くの公演が予定されているため、いまから訪れても、あいちトリエンナーレらしさを十分に楽しめるはずです。会期は1023まで。

 こちらは首都圏にお住まいの方は比較的気軽に参加できる芸術祭。首都圏では横浜トリエンナーレが開催されるようになってからは、大規模な都市型の芸術祭は増えなかったとこともあり、首都圏では久々の大きな国際展です(正確には私も今月行く予定なので大規模ではないかもしれませんが……)
 ディレクターは芹沢高志さんが務められています。日本でビエンナーレ文化が定着する過程では、それぞれ方向性は異なるものの、北川フラムさんと芹沢高志さんが主導的な役割を果たしてきました。特に芹沢さんは、別府で開催された「混浴温泉世界」に代表される地域の特性に根差した芸術祭の企画に定評があり、県内3カ所の会場をどう生かしているのかが楽しみな国際展です。会期は1211まで。

県北芸術祭

 こちらも今年度、茨城県の北部を舞台に初開催の芸術祭。さいたまトリエンナーレはこれから僕自身会場を回らないと分からない部分があるのですが、こちらは地域型のトリエンナーレらしい設計になっています。
都市型と地域型の大きな違いは、芸術祭の楽しみ方です。例えば、その代表である越後妻有トリエンナーレは基本的には車移動が出来る方が断然楽しめます。同様に北川氏が深くかかわった瀬戸内芸術祭も船移動が基本。今回の県北に関しても、あいちのように都市間を移動するというよりは、車で移動しながら一つ一つの作品を楽しむという印象です。
ディレクターは南條史生さん。日本の現代美術界を長年牽引してきたキュレーター、プロデューサーです。南條さんはシンガポールビエンナーレのディレクターを務めたこともあり、都市的な印象のある方なのですが、今回は今まで培われたセンスが地域型の国際展にどう反映されるかがみどころです。会期は1120まで。


 いかがでしょうか? 今回は、いわゆるビジュアルアーツを中心とした芸術祭に絞って紹介しましたが、パフォーミングアーツに目を向ければ「フェスティバル/トーキョー」も今月には始まりますし、関西では「KYOTO EXPERIMENT」も開催されるなど、「芸術の秋」に相応しいイベントが数多く提供されている10月です。
 スポーツとのセットはなかなか難しいかもしれませんが、それぞれ地域を売りにしていますので、各地の特色ある美味しい食事とセットでこの秋は芸術も楽しまれてはいかがでしょうか?

2016/10/03

大榎ゼミ,台北へ行く

 「卒業制作」を目指す学生が多く参加している大榎ゼミでは,例年,夏期休暇期間を利用して,各地のアートイベントを見学するゼミ合宿を行っています。一昨年は「横浜トリエンナーレ」を見学して横浜市寿町の「ドヤ」(主に日雇い労働者が宿泊する安宿)に宿泊体験,去年は新潟県越後湯沢の学生厚生施設に宿泊しながら,同県十日町市を中心に開催される「越後妻有アートトリエンナーレ」を見学,そして本年は台北市(台湾)で開催中の「台北ビエンナーレ」を中心に,「台北アート事情」を見学する旅となりました。

 もう10年以上も前になりますが,韓国光州市で開催される「光州ビエンナーレ」の見学へ出かけた際には,ゼミメンバーの3分の1ほどの参加にとどまりましたが,今回,大学からの助成対象となる「海外ゼミ研修」の採用を受け,旅行代理店風に「格安で海外へ」と呼びかけたところ,メンバーのほぼ全員が参加となりました。ただし,参加者が増えたことで日程調整が難しくなり,結果,中秋節の4連休という,日本で言えばゴールデンウィークの真っただ中に飛び込むような羽目となったわけですが……。

 1日目,台風14号が南に逸れ,羽田発の早朝便は,ほぼ,予定通り台北国際空港に到着。その後,ホテルに荷物を置いて,すぐに,市内にある現代美術のギャラリー「一年画廊」へ移動し,このギャラリーを運営するアーティスト鈴木貴彦さんのレクチャーを受けました。内容は,台北アート事情からはじまって,おススメの夜市やグルメ情報,それに台湾映画の紹介まで,短時間のうちに盛りだくさんのお話を聞くことができました。その後,我々はレクチャーの内容に沿って,市内の美術館,博物館,それにアートセンターを巡ることになります。

 ところで鈴木さんは,本学のメディア工房スタッフとして勤務した後,世界各地のアーティスト・イン・レジデンス(芸術家を招き創作を支援する活動)での創作活動を経て,現在,台北市を拠点に創作活動をされているという経歴の持ち主です。ちょうど「台北ビエンナーレ」を開催中の台北市立美術館において同時開催されていた子供のための展覧会「小・大 Small or Big」展にも出品されており,現地で活躍中のアーティストから,直接お話を伺うことができたのは,とてもラッキーだったと思います。

 さて,2日目以降の行動では,今回の見学のメインである「台北ビエンナーレ」について語らなければなりませんが,ここで一番驚かされたのは,作品や企画の内容よりも,何と言っても展覧会に関する「価格」でした。
 というのも,まず,入場料が学生団体料金で1人12台湾ドル,通常の大人料金でも30台湾ドル。これは,日本円に換算すると約3倍ちょっとですから学生は40円弱,通常料金でも100円弱です。2年ごとに開催される美術館最大の国際企画展の入場料金が100円というのは,他では考えられません。それに,ミュージアムショップで購入したビエンナーレのガイドブックもまた,台湾(中国)語版・英語版ともに各100台湾ドルでしたから,日本円に換算すると各300円台で,比較的小さい判型とはいえ,これまたあり得ない値段でした(さらに驚くことに,帰国後確認したところ,ガイドブックの内容は,すべてPDFファイルとして,フリーでダウンロードできるようになっていました!)

 確かに,地下鉄など公共交通機関の料金は格安ですし,夜市などの食べ歩きの際にも,物価の安さを感じることができますが,一方,コンビニでの買い物などでは,ほとんど東京で生活する感覚と変わらないというのが台北市の物価です。ですから,これは政策的に低料金となっているのです。文化事業に対しても「独立採算」などと,シブいことを言われることが多い我々の国や自治体とは,大きく異なる考え方があるということでしょう。

 じつは,鈴木さんが運営している「一年画廊」もまた,期限付きながら,台北市から無償で提供されているスペースなのです。台北市内には,「一年画廊」のような,古い施設をリノベーションして再利用しているたくさんの文化施設が点在しています。

 一般の観光客でも簡単にアクセスできる代表的な施設としては,山の斜面に自然発生的に出来上がった街を,アーティスト・イン・レジデンスの村に変えた「寶蔵巌国際芸術村(通称:トレジャーヒル)や,市内中心地にある酒造工場跡地を,映画館やカフェもあるおしゃれなスポットに変身させた「華山1914文創園区」などがあります。これらにおいてもまた,あまりお金をかけずにスペースを文化施設へ再利用している様子を確認することができます。

 芸術なのにお金の話ばかり,ですが,でも,これは重要なことです。つい,東京の常識であらゆる物事を考えがちですが,台北スタイルともいえるような方法があることを垣間見ることができた良い機会だったと思います。
大榎淳


・一年画廊(公式ページ)
http://1yeargallery.com/
・台北市立美術館(公式ページ)
http://www.tfam.museum/
・台北ビエンナーレ2016(公式ページ)
http://www.taipeibiennial.org/2016/
・台北ビエンナーレ2016ガイドブック(台湾(中国)語版)
http://www.taipeibiennial.org/2016//file/2016TB_Guidebook_TC.pdf
・台北ビエンナーレ2016ガイドブック(英語版)
http://www.taipeibiennial.org/2016//file/2016TB_Guidebook_EN.pdf
・台北市立美術館(台北ナビ)
http://www.taipeinavi.com/miru/7/
・寶蔵巌国際芸術村(台北ナビ)
http://www.taipeinavi.com/play/491/
・華山1914文創園区(台北ナビ)
http://www.taipeinavi.com/play/216/