2016/06/10

2015年度ベストティーチャー

コミュニケーション学部の北山聡です。

 このたび「学生が選ぶベストティーチャー」賞に選ばれ、うれしく思っています。

 講義やゼミは自分としても力を入れているので、それが学生に評価してもらえ、努力が空回りではないことを確認できたことが最大の収穫であり、最大の喜びです。

 特に「社会調査入門」の講義の評価ポイントが高かったそうなので、以下では、その講義で行っている工夫を紹介したいと思います。

 「社会調査入門」では、学生たちの社会調査そのものへの関心を高めることを意識しています。

 社会調査といっても学生には身近に感じられないようなので、たとえば、よく話題になるテレビ視聴率がどのように調べられているのか、NHKニュースで紹介される内閣支持率の調査方法など、実際に行われている調査の結果や手法を、講義の初めに10分から15分程度、長い場合には20分ほど使って紹介しています。

 ビデオリサーチ社のテレビ視聴率調査は、関東、関西、名古屋の3地域600世帯ずつに備え付けられたピープルメーターという装置で行われています。タレントの力を測り、番組の存続をも左右する視聴率は地域レベルでみると、わずか600世帯によって求められているわけです。調査の詳しい解説は、ビデオリサーチ社による紹介をご覧ください。

 実際にどのような手法が使われているかを知ることで、社会調査への関心が高まるのではと期待しています。

 調査の手法や結果を講義の最初に紹介することで、授業は2部構成になります。講義の90分は長いので、構成の工夫で、聞く側の集中力も維持しやすくなります。

 講義は学生が話を聞くだけになりがちなので、学生が主体的に関わるアクティブラーニング導入しています。

 講義では、毎回、授業内課題か宿題を課しています。

 講義内課題の簡単な例として、10問程度のアンケートに答えてもらい、その後解説を行うものや、次々とクエスチョンを出していき、答えてもらうクイズ形式での出題があります。調査のアイディアを学生が出していくワークを実施する回もあり、授業中ボンヤリしているわけにはいかないようにしています。

 実は、この授業、親しい学生から「1年生の時には一番面倒な講義だった」というコメントをもらうことがあります。

 毎回、ノートを取らないといけないし、授業内課題もあれば、レポートも書かされる。寝ていると起こされるし、その上テストは持ち込み不可、と座っているだけで時間が過ぎるのではない「面倒な授業」。

 それを、教え方の工夫の面において評価してくれた学生たちの見識に感謝しています。

 結局のところ、教えるという行為の効果は学ぶ側の意欲によって決まるように思います。学生たちの学ぶ意欲を、いくつかの工夫によって喚起できているとしたら、大変うれしいです。
「教える側の仕事の中心は、子供たちの関心を引き出し、学習意欲を高めることにある。その科目を好きにさせることが、そのための一番の近道。何時間授業したとしても、子供たちがその科目を嫌いになったら、授業の意味はなかったに等しい」。

 これは学生時代、講師として働いていた塾で言われた塾長の言葉です。

 私自身、大学で教えるようになった今も、これを自戒の言葉にしています。実は、塾長からは、もうひとつ教育に関する基本となる言葉をもらっています。これも、いつかご紹介しましょう。

 教員という仕事は、フィードバックをもらいにくい仕事です。いい講義をやろうと全力で努力し、それに成功したとしても、「先生、今日の講義はよかったです」と言ってくれる学生は限られます。失敗しても、面と向かって「先生の話はつまらない」と言ってくれる学生はまずいません。

 受講者数の増減は目安にはなりますが、講義への評価を必ずしも表しているとは言えません。どの単位要件に置かれているか(必修なのか選択なのか)、開設曜日時限、同じ時限の開講科目によって変わるからです。

 大学では、授業アンケートを実施して、学生からのフィードバックを生かす仕組みをつくっています。しかし、講義中に調査するため、講義に来ていない学生のことはわかりません。講義中にアンケートを配布し、回収するため、なんとなく本音を書きにくいという声も聞きます。

 個人的には、アンケート用紙の裏面にある講義に対するコメント欄(自由記述)に「今年大学で受けた授業で一番面白かった」といったコメントが毎年一つぐらいは書かれることを目標にしています。クイズ形式を取り入れたとき、そのコメント欄に「面白いやり方なので、もっとやって欲しい」と書いてくれた学生がいました。そのことですっかり気をよくして、ずっと続けています。

 今回初めて実施されたベストティーチャー賞、学生からのフィードバック回路として、今後も講義の改善に生かしていきたいと思います。


 北山先生、おめでとうございます。

 昨年度発足した「学生が選ぶベストティーチャー」賞は、以下の要領(抜粋)で実施しています。

1. 目的
 東京経済大学コミュニケーション学部は、以下の目的をはたすため、「東京経済大学コミュニケーション学部ベストティーチャー賞」を設ける。
(1)教育実践において学生から高い評価を得た学部教員を「ベストティーチャー」として表彰する。
(2)「ベストティーチャー」の高く評価された点や授業ノウハウを教員間で共有し、教育水準の向上を図る。

2. 賞の英文名称
 本賞の英文名称は、Best Teacher Awarded by Studentsとし、「BETAS(ベタス)を通称とする。

3. 賞の授与
 本賞は、学生アンケートの回答をもとに、以下の点について評価の高い教員を年に1回選出、表彰するものである。
(1)授業において、卓越した指導力で教育効果の高い授業を実践した者。
(2)教育方法の工夫又は改善に取り組み、顕著な教育成果をあげた者。
(3)その他、ベストティーチャー賞にふさわしいと認められる者。
 受賞対象者はコミュニケーション学部教員(コミュニケーション学部生が履修する授業担当者)とし、非常勤教員を含む。


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