2015/03/05

【学問のミカタ】卒業式と入学式のあいだ

 今月から毎月、各学部共通テーマで記事を書くことになりました。同じ素材のもと「学」による視点の違いを比較してもらおうという企画です。名付けて「学問のミカタ」。

 3月は「卒業」です。

 「ミカタ」には2つの思いが込められています。
 われわれ教員は、学生にとって、ものごとのいろいろな「見方」を示す、あなたの「味方」でありたい。その願いを3文字に託しました。どうぞよろしく。


 卒業式がいよいよ目前となりました。

 東経大の今年の卒業式は3月23日、月曜日です。正門から会場の100周年記念館まで、桜のトンネルができます。

 卒業式会場で、1年生のときのようすを覚えている学生に会うと、その成長ぶり(上から目線?)に驚かされます。大学での4年間は人生の転機になっていそうです。

 今から45年前、私が高校を卒業した年です。同級生は全国各地の大学に進み、バラバラになるため、卒業後は連絡が取りにくくなります。いまでも続いている友人は数える程度です。

 そうした状況が、携帯電話とメールの普及で一変しました。ケータイ番号は個人のものですから、どこにいても変わりません。卒業後も、それまでと同じように連絡できます。しかもメールであれば、相手の状況に関係なくやりとりできます。最近ではLINEを使う人も増え、メアドの交換さえ、懐かしい光景になりつつあります。

 このことを、新しい環境への適応という面から考えてみましょう。

 大学は新入生にとって新しい環境です。学級がない、担任の先生がいない。授業が90分と長くなる、レポート課題がある、時間割を自分で作らなければならない。

 これらの変化が生徒から学生になることであり、高校までと異なる点です。大学ではさらに、新たな人間関係の構築も求められます。

 私は大学入学を機に長野から東京に来ました。大学に入ってからは、高校時代の友人に会おうと思っても、離れていてままなりません。固定電話を持っている友人はいないので、連絡もすぐにはとれません。電話の加入料が7万円もした時代です。

 地元外から通う大半の学生は大学入学と同時に、人間関係を新たに築くしかありません。人間関係の移行がうまく行くかどうかは新しい環境への適応を左右する重要な要因です。私と同じように独り住まいの学生が多かったせいもあり、いつのまにか友人ができていきました。

 さて今はどうでしょうか。地元から通う学生が増えていることも関係していますが、大学入学後も、かつての友人と連絡も簡単に取れ、会うのも容易です。そのような環境であれば、旧友との付き合いも続けやすく、新たな人間関係を急いで作らなくてもなんとかなるかもしれません。半面、新しい友人を作るのに時間がかかるかもしれません。一方で、こんな話も耳に入ってきます。

 入学予定者同士が入学前からTwitterやLINEでつながるようになって、入学以前から一定の人間関係ができあがっている。

 このような状況は、卒業と入学との間に明確な区切りを許さないように見えます。その分、大学入学が新たなスタートになりにくくなっているとも言えます。

 人生には節目が必要です。節目は、それまでの人生を挽回する機会でもあれば、新たな挑戦の機会もあるからです。

 メディアの二面性、便利さの二面性について考えてみませんか。

 トケコミでは、コミュニケーション心理についても深く学べます。
(川浦康至)


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